澄み切ったバリの空

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2012年 09月 14日

Mt. Fuji

富士山が私を呼んだね。

世界で一番美しいと思う山。
何十年か前の春、富士山周辺の山に登ったことがある。白銀の冠を頂いた富士山が間近に見えて、それはもう、息をのむほど美しかった。
大きくて、圧倒的で、春の野鳥がきれいに鳴く静かな春、ほれぼれと富士山を眺めながら、山歩きを楽しんだあの日・・・。

その後、「富士山は見る山で、登る山じゃない」というような声を何度か聞いた。富士山に登ったら美しい富士山を見ることができないからかなぁ・・・。人がいっぱいで道が渋滞するとか、面白くないとか。
しかし人がなんと言おうが、呼ばれたものは仕方がない。
私は登る。

登山で重要な要因のひとつに、天気がある。雨や風は大きな障害となるからだ。
それで、ツアーを申し込む前に天気予報とにらめっこ。
それと富士登山は7月8月がメインで9月になると大半の山小屋が閉まるとか。要するにトイレの数が減ってしまうのだ。その辺の山なら問題はないが、ここはとにかくすべてが整備された富士山。その辺で用を足すというわけにはいかない。
ツアーもどんどん減っていって、最終が9月の16日。
思い立ったのが9月過ぎで、またぎっくり腰で通院もしていたので、日程は限られてきた。それとも来年にするか?
いや、待てない。途中まででもいいからとにかく行く! と決めた。

ゆったりめのスケジュールにしたかったが、そういうわけでちょっとハードな「朝大阪発のバスで、富士5合目に夕方5時着。そこで夕食と着替えをして、即8合目まで登り、3時間ほど休憩仮眠して、1時半から山頂を目指す、ご来光を見てすぐ下山、バスで大阪へ」というコースを選んだ。

あわただしく登山の準備をして、新大阪の集合場所へ。しかし誰もいない。なんで?
集合10分前になったので、緊急電話をしようと陰へ移動した。すると、そこにツアー受付のおじさんが立っているのに気づく。やや苦笑のわたくし。もっと柔軟に行こうぜ。
(写真左の人。背中にツアー名、手には受付表の板)

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そこには既に待っている登山者が何名か腰を下ろしていたり、仲間と談笑していたりした。
わ、若い・・・! 女の子は化粧っ気なしでぴちぴちの肌。大学生? 男の子も体育会系のムード。装備はもう既に使いこなしているという感じ。
年配の婦人が大半と聞いていたので、私がついていけるかとやや考えたが、ま、行けるところまででいいやと思い直した。

バスに乗る。京都、大阪から乗っている人たちは静かにリラックスしている。3列シートのバスだからか、私語はほとんどなしの静けさ。向こうへ着いたらすぐ登山開始なので、バスでは寝ていなければならないのだ。

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私は一人だし、緊張していた。

高速のサービスエリアでトイレ休憩のとき、添乗員さんが訊いてくれた。
「眠れました?」
「私・・・バスでは眠れないんです」
「イス倒して、リラックスしてください」
30代のやさしげな男性で、みんなと一緒に登るそうだ。山岳ガイドもつく。だから不安は一切ない。
なのになぜ緊張していたか?
帰りのバスは翌日朝10時出発で、それまでに下山できない人は、自力で帰らなければならないからだ。下りに4時間かかるという。もし膝が痛くなったら? 
最近、私の左膝は、下山中必ず痛み出した。2時間の下山でそれだから、4時間は必ず??
根性はそれなりにあるが、膝の痛みだけは歩くことを阻害する。。。ま、様子をみて8合目までにするかどうか判断しよう。

バスは富士山に近づいた。河口湖が車窓に。

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添乗員さんがいろいろ説明してくれた。
「信号を見てください。富士山がデザインされているでしょう? 下の5つの穴は富士五湖を表しているそうです」

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天気予報は、14日:晴れのち曇り。15日:曇りのち晴れ。

バスが五合目に着くと、霧がかかっていた。
すぐ着替えのため更衣室へ。そこから乗ってきたバスが見える。

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五合目は登山客ばかりでなく、一般の観光客や海外からのグループもいた。インドネシア語も聞こえる。
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更衣室へ行くとき、隣に座っていた女の子が「着替えましょう! 私、登れるかしら・・・緊張します」と私に話しかけた。
靴を見るとけっこう履いている感があったので、登りなれている人と思ったが、登山は初めてという。
「一緒に行動しましょう。心強いし」

2階で着替えて別の場所のトイレに行った。
霧を見て彼女は嬉しそうだった。
「わ~、すごい! 嬉しいですね」
「はい! とっても」
可愛い人だなと親近感を持つ。

着替えた建物に戻って3階の食堂で夕食。時間に余裕がないので、急ぎ気味の行動が続く。遅れてきた女の子2人連れは「どうしよう、早く食べなくちゃ! 食べることに集中しよう」 と焦っていた。
「大丈夫ですよ、まだ20分あります」

添乗員さんが食事中説明してくれる。
「このピンクの紐を左の靴先に結んでください。夜間登山となりますので、暗闇の中ほかのグループと間違えないように判断します。食べ終わったら集合は5時10分に外の石畳のDです。」

食べ終えてリュックを取ろうとすると、すぐ隣にまったく同じリュックが置いてあった。2日前に買った小型のリュック。モンベルの赤だ。きっとこのリュックの人も新しく買ったんだろうな。

集合場所へ!

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私は帽子も上着も新調した。今どきの山用品の店はとても楽しい品揃えで何でもあったし、ファッショナブルにもなっている。
今回膝をかばってサポーターも買った。締め付けるのはキライなほうだが、背に腹は代えられない。膝が痛くなりませんように! ぎっくり腰もまだ完治してないしー。

さ!
グループ総勢18名と添乗員さん、登山ガイドさんも加わって準備体操の始まり。
円陣になってストレッチする。後ろの若い男の子が「イテテ…! うーーーっ」と叫ぶ。長時間バスに揺られていたからなあ。

それから装備のチェック。「レインコートは全員持ってますね? 下もです」
若い女の子が一人、上しか持っていなかった。ガイドさんは買いに行く。
「ライトはありますか? バッテリーは大丈夫ですね?」
電池を入れてチェックしている人。
「これ、プラスマイナスどっちだろう?」
このメンバーは富士登山2回目の人が1人だけで、あとは初めての人ばかり。ちなみに私のヘッドライトも新品で使い方がまだよく把握できていないのだ。でも小さな懐中電灯も持ってきていたので、一応安心。

「それでは登りま===す!」

夕方5時40分。ガスっているせいか、既に薄暗い。
私は先ほどの女の子、K子さんと一緒にガイドのすぐ後ろについた。遅い人が前に行くのだ。
しばらく歩いてガイドさんが梢を見上げて言った。

「あーーー、・・・・紅葉が始まっちゃってるよーーー」 と少し笑う。

その様子がまるで映画のワンシーンのようだ。彼は独特のムードを持っていて、ちょっと高倉健と「北の国から」の父親役の・・・を足して2で割った感じだった。

道の左側はガスって真っ白。添乗員さんは「こんなのなかなか見られません」と言った。
「いつもはどんな感じなんですか?」
「全部見えます。こんなのは見たことないです。神秘的ですね」

まもなく暗くなる。
「ヘッドライトつけましょう~」

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40分に一度くらい休憩する。
ザックを下ろして水を飲み、行動食を取る人もいる。トイレは有料。富士山は川がないので、バイオ方式のトイレ、維持費がかかるのだ。たいてい200円だった。とても衛生的なトイレだ。水が再利用なので薄いグリーン色をしている。「バイオ」的な清潔な匂いがした。

「星がきれいーーーー!!」

「あ! 流れ星!」とK子さん。「初めて見ました!」

空を仰ぐと、北斗七星らしき星座があった。
「あれ、北斗七星ですか?」
「そうです」
「じゃあ・・・・あれがカシオペア座かな?」
「そうそう」
「じゃあ、北極星は・・・・」
「あれかな?」
「あれだよね、ちょっと明るくて間にあって」

「これ食べます? おさつどきっ」
添乗員さんがみんなに差し出す。
「わ! ありがとうございます。いただきまーす♪」とK子さん。素直で礼儀正しいな。
私も少しいただく。

今日初めて会った仲間。こうして行動を共にすると、喜びが湧きあがってくる。

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道は始め細かい砂利道だったが、階段や岩場も混じってきた。息が切れる。6合目はなんなく着いたが、岩場になるとけっこう来た。いつのまにか私の前を歩いていた若い男の子2人が話している。
「こんなに歩くことって普段ないもんな」
「しんど! これ、人生より厳しいわ」
「いやー、人生のほうが厳しいって。人生の中にこれがあるんやもん」
「おれの人生なんか、山にたとえたらまだ1合目やもんな」
しんどいしんどいと言いながら、歌を歌いながら登っている。がんば、がんばと声を掛け合っている。
ああ、若いっていいなー。なんかすがすがしさを感じた。

途中休憩のとき「食べる酸素」というタブレットを開けてみた。
「これ、いります? 食べる酸素」
「あ! いります。ありがとうございます!」
グレープフルーツ味だった。なぜにこれが酸素なのかは知らないが。

「深呼吸を忘れないでくださーーーい!」
高度が上がると、脳に酸素が不足して、気分が悪くなったり頭痛や吐き気がしたりするらしい。
添乗員さんも以前6合目で睡眠不足のため高山病になりかけ、深呼吸で乗り切ったそうだ。

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「みなさん、いいですか? 下に山中湖が見えてきました。分かりますか?」とガイドさん。
湖岸の明かりが湖の輪郭を示している。

ヘッドランプのベルトは頭を締め付けるので首にかけてもいいと説明を受け、なるほどーとそうしていたが、岩場にくると揺れて視界が不安定になった。平衡感覚を失うので頭に付け替えた。たいへん快適だ。軽いし優れものだなあ。3段階の明るさがあるが、2番目で十分だった。

サポーターは気にしていたほど締め付け感はなかった。かえって足が軽い。やはりこれも優れものだ。
何度か休憩したのち、8合目に到着! 10時ごろだろうか。

山小屋のスタッフが「お疲れ様でした~」と迎えてくれる。
「寒いのでとにかく入ってください。お渡しするお弁当とお茶はいつ食べてもいいです。ごみはその弁当ガラと缶だけ回収できます。靴を持って、お連れ様同士で入ってください」
K子さんの姿がなかったが、疲れでぼんやりと小屋の中へ導かれていった。途中弁当包みを手渡される。
寝る場所は部屋に入った者順なので、私はK子さんを探しに戻った。
男性がズラッといて、その後女の子たちが入ってきた。
「もう何もしたくなーーい」と金剛杖を持った女の子。
そしてK子さんがいた。出会いがしら「もう私8合目までで!」と言う。
「とにかく寝ましょう!」
私たちは下の段のすみっこに場所をもらった。寝る用意をしていると、K子さんは「私休ませてもらいます」とそのまま布団に潜りこんだ。よほど疲れていたのだろう。私も洗面も歯磨きもせず、ただコンタクトレンズをはずして、サポーターをぬいで、レインウェアもそのままもぐりこんだ。
掛け布団と毛布は暖かった。疲れでなぜか耳がジンジンした。でも足は痛くならなかった。サポーターの威力はスゴイな。これから3時間ほど休んだら、上まで登れるかもしれない。帰りはどうか??・・・・
そんなことを考えているとますます眠れない。今はとにかく休養を取ろう。。。
起床は2時。

寝る前にトイレも行かなかったので、途中行きたくなった。今トイレは工事中で、外の仮設トイレに行かなければならない。面倒だ。・・・だが行くことにした。
外はビュービュー風が吹いている。トイレの入り口がどこかわからない。ロープで囲われている・・・。ちょっと探すとなんのことはない、ほかの扉から出ればよかっただけのことだ。
体調は回復した。上まで登ろう。

2時になる前に、K子さんが起きてどこかへ行った。トイレかな? なかなか帰ってこない。
そのうち私も起きることにした。K子さんが戻ってきて「眠れないのであっちに座ってます。準備だけして」と言った。よかった、元気そうだ。
玄関近くの広間へ行くと、K子さんがここ! と手を挙げて合図してくれた。
「元気になりました?」
「はい、でも私はここまでにします。登れるとは思うんですけど降りれない。一人で帰ります」
「え!? そうですか、じゃあ私もここまでにしようかな」
「そんなのもったいないですよ」
「でも最初からそうしようと思ってたし。一人じゃ心細いし」
「ここから下山道に出る道あるそうです」
と彼女は地図を広げた。どうやら迷う箇所はなさそうだ。
「じゃあ、添乗員さんに伝えましょう」
「はい、どこかしら」

私たちは外へ出て、彼を見つけた。
「私、リタイアします!」とK子さんはきっぱり、しかし明るく言った。
「私もそうします。2人だから安心ですよ」
「そうですか、じゃあ5合目で会いましょう」

残念という気はあまりなかった。なんだか全てがこれでオッケーな気分だった。
寝床を移動しなければならないので、靴とザックを持って行ってまた寝た。

しばらくすると彼女はまた出て行った。
広間の方で人の声がした。別のパーティーかな?

K子さんが戻ってきて、小声で話した。
「みんな戻ってきました。風で登れないんですって」
それからまた布団にもぐりこんだが、再度トイレに行ったとき、既に少し明るくなりかけていて景色を見たかったので、寒くないよう服を着に戻った。K子さんが何か話したので、「私、もう起きるわ。景色きれいよ」と言った。
「私は今・・・あったかくて気持ちいいから・・・」
「うん、寝てなさい」

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別の団体も来て、小屋の前は人でいっぱい。
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添乗員さんが「おはようございます。一緒に下りましょう」と声をかけてくれた。

みんなも起きてきて、景色を見ながら質問している。
湖は4つ見えていると思ったが、山中湖と、その左に河口湖が見えるだけらしい。その左奥に西湖、あとはここからは見えないそうだ。

「あ! ご来光だ」

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みんな写真を撮りあいっこしている。
近くにガイドさんがいたので、「一緒に写真いいですか?」「いいですよー」
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せっかく撮ってもらってけど、逆光で真っ黒け。こんなにステキなのよ。
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「青木が原の樹海はどれですか?」
「樹海はねえ、2つあるんです。あそこから右は〇〇樹海、左が青木が原樹海です。そしてね、あの色が変わっている所は自衛隊の演習場です。広いでしょう。」

「今、江の島も見えてますよ。ちょうど日の当たっているところ・・・」
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右手には芦ノ湖も見えた。
「日本で最も標高の高い湖です」

ひとしきり景色を楽しんで下山となった。

「これから少し登ってトイレに行きましょう。もう下までありません」
ここにもあるのにどうして?
皆は従順に少し登ってトイレに行った。それから下山。途中ガイドさんは言った。
「さっきの小屋はね、3,250メートルなんです。日本で2番目に高い山は北岳、3,240メートル。だから皆さんは日本一の山に登ったんですよー」
ふふと笑った。なんだか優しい心遣いだ。やはり富士山に登ろうという人は、日本で一番高いところへ行きたいというのも理由の一つなのだろう。

下りはきれいな景色を楽しみながら、K子さんといろいろなことを話しながら、ゆっくり下った。

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頂上までは、あと3キロくらい。
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赤い斜面。
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8つのこぶがあるので八ヶ岳。
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青木が原の樹海。
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下りは岩場はない。ずっとこんな砂利道が続く。
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ガスが湧いて昇ってくる。後ろにはいつのまにか巨大なレンズ雲が出ていた。写真は撮り損ねる。
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馬だ! 6合目で下れなくなった人は、馬が迎えにくるとバスで説明を受けた。だが、料金は1万2千円?
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五合目の宿が右手奥に見える。登山も終わりだ。あー、名残惜しい富士山。

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下山者カードにチェックして、お土産屋さんを一巡り。

それからバスに乗って温泉&豪華バイキング。露天風呂がどんなに気持ちよかったか、食事がどんなに美味しかったかは言うまでもない。
ガイドさん添乗員さんK子さんを始め、すべての人と物事に感謝。誰でも登れる富士山はやはり、世界一の山だ!(完)

★今回参加したツアー会社紹介のステキなDVD。ぜひご覧ください!
http://www.youtube.com/watch?v=VOaKPACs_F0&feature=player_embedded
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by reikocinta | 2012-09-14 07:20


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